― 身体が語り出す時、文化がパフォーマンスを左右する ―
① 若いうちは昼寝など不要だった
若い頃、特に30〜35歳未満のうちは、短い昼食後でも午後まで集中して働き続けることができました。
身体は元気で、神経系も柔軟、夜の睡眠も深くて質が良い。このような条件が揃っていたため、昼寝をせずとも高いパフォーマンスを維持できたのです。
欧米諸国では、それが当たり前とされています。
職場では通常、
- 昼食は15〜30分で簡単に済ませ、
- すぐに仕事に戻る、
- 昼寝や長い休憩は取らない。
それでも疲れずに働けるのは、高カロリーで安定した食事、静かなオフィス環境、規則正しい生活リズムのおかげです。
若さとは、それほど大きなアドバンテージだったのです。
私自身も、かつては何年もそのような生活を送っていました。
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② 40歳以降、身体の変化と「メンテナンスとしての昼寝」
しかし40歳を過ぎると、どれだけ気力で頑張っても、身体は徐々に目に見えない疲労を訴え始めます。
具体的には:
- 夜の睡眠が浅くなり、途中で目が覚めやすくなる
- 午前中の疲労が午後に持ち越される
- 昼食後、眠気や集中力の低下が起こる
それでも無理に働き続けると、パフォーマンスは逆に下がり、午後はただの「耐える時間」と化してしまいます。
こうした状況では、15〜30分の短い昼寝(パワーナップ)が回復の鍵となります。
それは怠けでも甘えでもなく、**身体が必要とする「自然な再起動」**なのです。
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③ アジアとヨーロッパ ― 昼休み文化と働き方の違い
アジア(ベトナム・日本・韓国・中国)
- 昼寝は文化の一部。幼稚園から習慣化されている。
- 高温多湿の気候の中、昼は休憩・回復の時間。
- 早朝から夕方遅くまで働く習慣があり、昼寝でエネルギーを延命する必要がある。
- 机の下や椅子で寝ることも普通。周囲にとがめられることはない。
ヨーロッパ(フィンランド・ドイツ・北欧)
- 職場に「昼寝する」という概念がない。
- 昼食後は軽く済ませて、再び集中して働く。
- 勤務時間はきっちりしており、残業も少ない。
- オフィスは静かで、精神的な疲労が蓄積しにくい。
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④ 食事内容もパフォーマンスに影響する
欧米の食事:バター・チーズ・肉・パン中心
- 高タンパク・高脂質・高カロリーでエネルギーが持続しやすい
- 一度の食事で長時間の満腹感が得られ、エネルギー切れになりにくい
- 例:卵・ハム・チーズ入りのサンドイッチなどで午後まで持つ
このような食事は、昼寝をしなくても活動を続けられる土台になります。
アジアの食事(ベトナム・日本・韓国):ご飯・汁物・野菜・煮物中心
- 炭水化物が多く、脂質は少なめで持続力に欠ける
- 食後すぐに血糖が上がりやすく、その後低下しやすい → 眠気やだるさが出やすい
- 「満腹だけど疲れる」感覚は、炭水化物過多によるもの
つまり、アジア人は美味しくてもエネルギー維持が難しい食文化を持っているため、昼寝での回復が自然と必要になるのです。
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⑤ 結論 ― パフォーマンスは「根性」ではなく「身体理解」から
若いうちは昼寝なしで働くことができる。それは確かです。
でも40歳を過ぎてからも、同じペースで働こうとすると、
- カフェインで無理に起きて、
- 意識を保とうと努力して、
- 結果的に効率は落ち、夕方には完全にバテる…。
それよりも、短時間の昼寝を取り入れる方が、理にかなった身体メンテナンスになります。
人間の身体は、8時間連続労働に設計されているわけではありません。
特に中年以降は、年齢・食事・気候・文化のすべてがパフォーマンスに影響するのです。
年齢に応じて、一日の働き方を再構築する。
それこそが、賢くて、持続可能な選択だと思います。